心年
2016年が終わるまで、残り数分。僕は今、慌てている。好きな子からのLINE。送られてきた一言に僕は動揺を隠せない。
「好きです」
残り5房のみかんを一気に口に詰め込んだ。1房ずつ食べるはずだったのに……
しかし、このメッセージは本心からなのか……いや、そんなはずない。あの子には本命の人がいる。それは、毎日下校時に感じていた。3人でいてもあの子の目線はいつもヤツをおっている。……となると、僕に対するドッキリか? そう、きっとそれが正解。
「それ、ドッキリでしょう?」
既読がつく。2つめのみかんに手を伸ばす間もなく、スマホが震える。
「バレた? 面白い反応を期待したのに」
いつもイタズラばかりする子だ。この前も、僕が貸したノートに小さな落書きして返してきたものだ。本人曰く「担任の先生」らしいが、全くそうには見えなかった。どちらかというと、隣のクラスの先生に見えたのだが……
いつもなら、あの子の考えが手に取るように分かる……はずだった。それなのに、今は全く分からない。まさかとは思うが、僕の本心を知っているのか? それは怖い。向こうの本命は僕ではない、分かっている。フラれるのに決まっているのに……
「そんなこと、本気にするわけないでしょう?」
あの子は僕を、ただの友達としか見ていない。バカみたいにふざけたり、テストの点数を競ったり、一緒に再テストを受けたり……そんな日常が続いていくだけなのだ。本気であるわけがない。だから、もう……こんな会話、終わってほしい。
スマホが震える。
「やっぱりそうか……少しだけ本気だったのに」
……えっ? 本気だったって? でも、「少しだけ」ってどういうことだ? クエスチョンマークだらけの頭の中。さらにスマホが震える。
「本心が知りたかっただけだよ」
……何を望んでいるのか、予想もできない。相手の本心なんて分からない。けど、自分の本心を伝えることは出来るはず。決心した。震える指を動かし、LINEを送る。
「僕は好きだよ」
届いてほしい、僕の本心が。
テレビの中のアイドルが
「ハッピーニューイヤー!」
って叫んでいた。
著:永遠都魅靡兎